今回はエンジンまわりの点検について解説します。
農機具の動力であるエンジンをサポートしている大切な点検項目ですので、しっかりチェックしていきましょう。
<その④>ラジエーター
稼働中に発熱したエンジンを冷ます冷却水(通称クーラントまたはLLC)。点検には2ヶ所のポイントがありますので解説していきます。
【ポイント1】ラジエーター前面に差し込んである防虫網
この機種は赤矢印部に取っ手があり、上に引き抜ける構造になっています。
【ポイント2】ラジエーターキャップ
写真の青矢印部のようなラジエーター上部にある同形状の蓋を見つけて下さい。
ポイント1の防虫網を引き抜き、写真の赤枠部分をチェックして下さい。
ここに虫の死骸やゴミが付着しているとラジエーターの冷却効率が大幅にダウンします。
エアーブローでの掃除をオススメしますが、なければほうきで異物を取り除いて下さい。
掃除の際に強く叩いて変形させないように注意して下さいね。
ポイント2のラジエーターキャップを外します。
必ずエンジンが冷えている事を確認してから、蓋を反時計回りにネジって開け、取り外して下さい。(蓋を落として紛失しない様に注意!)
※エンジンが温まっている時には熱湯と化した冷却水が水蒸気と一緒に勢いよく吹き出し、たいへん危険です。絶対に開けないで下さい。
蓋を開けたら内部を覗き込み、冷却水(緑色の液体)が穴の口元近くまで入っているかを目視で確認して下さい。パッと見で冷却水が確認できれば問題ないですが、液面が目視で確認できない場合は、水漏れのトラブルを抱えている可能性があります。
冷却水はエンジンを冷却するために必要不可欠な存在です。エンジン関連の点検ではオイルに意識が囚われがちですが、オイルと同様に非常に重要な役割を担っています。
もし液量に問題がある場合は、オーバーヒートになり、抱き付き・焼き付きといったエンジン本体に致命的なダメージが発生するおそれもあるので早急な対処をオススメします。
<その⑤>エアーエレメント
エンジンの燃焼行程には空気が必要不可欠です。その吸い込んだ空気に含まれる大気中の小さなゴミを除去して綺麗にする役割を担っているのがエアーエレメントです。
エンジンまわりに写真のような黒いボックス形状の部品があります。それがエアークリーナーBOX。
赤丸部のように蓋があります。この機種だと3ヶ所のロックで蓋を固定しているだけなので、ロックを外せば簡単に蓋が取り外せます。
メーカー・機種によって三者三様ですが、基本的には簡単に蓋を外せる構造になっています。
蓋を外せば内部に矢印のようなフィルターがあります。
これを取り出して付着したゴミをエアーブローで吹き飛ばしていきます。
まず外側を掃除してジャバラ状のフィルター部分に埃の固まりがないかを確かめます。
なければ内側から外側に向かってエアーブローし、埃が出なくなればフィルター部に破れがないかを確認してから組み付けて下さい。
これも防虫網と同様に、強く叩きすぎれば変形やフィルター部の破損につながりますので、ほどほどでお願いしますね。
また、「掃除=洗う」という発想で、水洗いするのはNG!絶対にしないでください。
掃除に必要不可欠なエアーブローを行うには、エアーコンプレッサーが必要です。
現在コンプレッサーを所有しておらず、ご自身でエアーブローが出来ない方や、これを機に購入をご検討されているそこのあなた。ぜひ最寄りの農機センターへお問い合わせ下さい!
エアーコンプレッサーの販売はもちろん、エアーエレメントの点検も随時お引き受けいたしております。
<その⑥>燃料フィルター
普段あまり聞き慣れないけど、燃料に混入した異物を除去し、エンジンの保護にも役立っている燃料フィルター。このマイナーな部品は、エンジンの保護にもつながる、機械のコンディションを知る上で重要なチェックポイントです。
エンジンの側面をチェックすると矢印で指したのと似たようなパーツが確認できると思います。
上部の金属部分にぶら下がる形で、外側が透明の樹脂で内部に何かの液体が入っており、その液体に浸かるように小さなフィルターが確認できれば、それが燃料フィルターです。
コンディションが最適ならば写真のように内部のフィルターが綺麗に見えます。これが汚れて真っ黒になっていればそろそろ交換時期ですね。
フィルターの点検は基本的に全て外側から目視で行いますが、異物が確認できれば燃料タンク内に何らかのゴミが混入しているか、もしくは最悪の場合タンク内に錆が発生していることも疑われます。
また異物だけでなく内部に見える液体(結局のところコレが燃料なのですが…)が内部で上下に分離しているようならば、燃料に水が混入していると判断されます。
どちらにしても燃料はとっても重要になりますので、常にベストな状態が望ましい。点検で何か異常が見つかったり、不振に感じたりすることがあれば、そのまま使用せず早急にプロにお任せする事をオススメします。
<その⑦>ベルト
エンジンに必要不可欠な部品であるベルト。正確には「補機ベルト」と呼びますが、一般的には「ファンベルト」の愛称で呼ばれ、皆さんも聴き慣れた部品だと思います。
このファンベルト、大変重要な役目を担っており、バッテリーを充電するオルタネーター(ダイナモ)を作動させたり、冷却用のウォーターポンプやクーリングファンを作動させたりしています。
もしトラブルを抱えていることに気付かず、トラクターを使用してしまったら、農作業の真っ最中にバッテリー上がりやオーバーヒートが発生しちゃうかも…
ファンベルトもしっかり点検しましょう。
エンジンの前側とラジエーターの間を覗き込んでください。
赤枠で囲んだ部分にベルトが見えると思います。
これがズバリ「ファンベルト」です。
まずエンジンが停止していることを確認した上で手を突っ込んで、ベルトの一番長い部分を指先でつまみ、引っ張ったり押したりして「たわみ量」を確認します。
その時のたわみ量が目視で5mm~1cm程であればベストな状態。しかしそれ以上にたわむようならベルトの張り調整が必要となります。逆に張り過ぎは回転部分の軸受けに負担をかけてしまうので、これまたNG!
張り具合をチェックしたら、お次は損傷の確認です。
ベルトの内側をよ~く見て下さい。
なにも異常がなければOKですが、その部分に亀裂が入っていたり、表面が剥がれ落ちていたりするようなら即交換が必要です。
写真のベルトは実際に点検で入庫されたトラクターから取り外した物で、バリバリにヒビ割れが発生し、表面も部分的に剥離している状態。とっくに限界を通り越し、いつ切れてもおかしくない…
案外このような状態のトラクターが多く見受けられます。皆さんのトラクターは大丈夫ですか?
ちなみに写真では分かりやすいように取外していますが、実際には外さずに隙間から損傷を確認します。
暗くて見え辛い時は明かりを照らしますが、間違ってもライターやロウソク等の火は使用厳禁ですよ。
こういう時のために最寄りの農機センターでは作業に最適な作業灯やハンディーライトをご用意しております。あれば便利!これを機にぜひお買い求め下さい。
それともう一度、「ベルトの点検は必ずエンジンが停止している状態で」を心掛けて下さい。
動いている時に手や何かを突っ込んで巻き込まれて大惨事、なんて事にだけはならないようにご注意ください。
トラクターの点検もあと一息!
次回はトラクター点検最終章。「各部」の点検について解説していきます。