前回は2サイクルエンジンの吸気部分についてお話ししてきました。
では、「排気側は?」と言うと、ここには特にバルブがなく、シリンダー内部で爆発燃焼した際に発生する排気ガスを、掃気ポートより高圧で流入してきた混合気とピストンの圧縮行程による圧力で排気ポートへ押し出し、エンジンに接合されるマフラーより排気ガスが大気中へと排出されているわけなのですが、2サイクルエンジンではこのマフラーの構造が最大のポイントになります。
今回は2サイクルエンジン特有のマフラーがどのような仕組みになっているかを簡単にご説明しますね。
4サイクルエンジンのマフラー形状は、同一の太さで単純な筒状のパイプになっていますが、2サイクルエンジンでは入り口から出口にかけて徐々にパイプの径が太くなっており、出口付近では入口に対して何倍にも大きく膨らんだパイプが、出口で一気に絞り込まれて細くなっているという、まるで胃袋のような膨張管形状の構造となっています。
これは見比べると一目瞭然!
一般的に排気ガスは排気ポートからマフラー内部に流れ込んだ際に、その排圧(排気ガスが出て行こうとする圧力)により出口に向かって一気に排出しようという流速のエネルギーが発生します。
しかし2サイクルエンジンのマフラーでは、その構造上出口が極端に細く絞られているため、排気ガスがスムーズに排出できずに詰まった状態になってしまいます。
つまりマフラーの入口から出口にかけて力コブのように徐々に太くなり出口で絞り込んでいる形状が作用して、出口で詰まった排気ガスがマフラーの内部全体にある程度溜まった状態になります。この内部に溜まった排気ガスがポイントで、絞られた出口にぶつかって跳ね返り入口に向かって逆流した排気ガスがエンジン内部から排出しようとする排気ガスの抵抗となり、ここで発生する排気干渉により自然とバルブの役目を補ってくれているのです。
【引用】http://www.geocities.jp/kenpon123/24-2-image2.jpg
排気ガスが完全に詰まった状態だとエンジンはまともに作動せず、逆流してくる力が強すぎて排気干渉が大きすぎるとエンジンが高回転までストレスで回らなくなってしまいます。
しかも高温の排気ガスがシリンダー内から放出され難くなるため、結果的にピストンやエンジン自体の温度が上昇し過ぎることで熱害が生じ、焼き付きや抱き付きといったトラブルだけでなく、デトネーションという少々聴き慣れないトラブルも発生してしまいます。
これは逆に抜けすぎても問題で、この場合は単にエンジンが力なく回るだけで、特にエンジンの回転数が低・中回転域では全体的に出力が極端に低下し、やたら高回転に出力が片寄った実用性ゼロとも言えるピーキーで扱い難い特性になってしまいます。
この力コブのような絶妙な形状によってベストな排気干渉を発生させている2サイクルエンジン。
太さや長さだけでなく形状も含んだ3要素が、エンジンの性能を大幅に左右しているというわけなのです。
これまでのお話から、2サイクルエンジンは、エンジン単体・マフラー単体と切り離して考えるのではなく、マフラーもエンジンの一部、つまりエンジンの特性や性能を大きく左右する部品として重要視した上で扱われています。
ちなみに…
一般的に車やバイクでは排気ガスを排出するパイプをマフラーと称しますが、2サイクルエンジンでは『チャンバー』という呼び名が整備業界では当たり前に使用されています。
今回はここまで。次回は、もう一つ踏み込んだ部分にも触れてみようと思います。