誰かがしなければ、イノシシは増え続ける。みんな頭を抱えているなか、少しでも力になれればという思いで続けている―
そう話すのは、農家仲間の育てた大切な農作物を鳥獣被害から守るため日々奮闘する片岡健次郎さん(73)。南山崎支部支部長を務める片岡さんは、自身も柑橘・落葉果樹農家として毎日の農作業を行う傍ら、わな猟により年間70頭近くのイノシシを捕獲している。
JAえひめ中央南西エリアの山間地に位置する南山崎地区は、キウイやビワ、柑橘の栽培が盛んな地域。
片岡さんが狩猟免許を取得したのは20代の頃。当時は野うさぎやキジなどの被害だけだったが、20年ほど前から本格的にイノシシ被害が発生し始めた。「野菜の圃場を荒らすだけでなく、たわわに実るキウイもイノシシの餌食。まもなく収穫か、というタイミングで被害に遭うから辛い」と片岡さんは話す。
片岡さんは昨年3個、今年さらに3個の檻を購入し、今は13個を所持・管理している。朝6時から農作業、10時から鳥獣害の見回り、夕方から再び農作業を行うのが日課になっており、柑橘の繁忙期以外はこの生活を毎日続けている。片岡さん曰く、イノシシも賢くかつ舌が肥えており、餌となる米ぬかを毎日変えないと、檻に寄り付かないのだとか。
取材日も檻には1頭の子イノシシがかかっていた。どこか寂し気な表情を浮かべる片岡さん。「私も動物が好きな一人。なるべく苦しまないように天国へ送っている」と心境を語ってくれた。
南山崎地区には16名の猟友会のメンバーがおり、年間300頭近く捕獲実績があがる。「対策を1年でも休んだら、大変なこと。自分に出来ることをコツコツと続ける」と話す片岡さん。
同地区も高齢化が進むエリア。生産量を維持するためにも、鳥獣害対策は喫緊かつ長期的な課題である。「この土地での農業を次世代に繋げるため、支部長としてだけでなく、いち農家として尽力していく」と意気込みを語る。