今回はエンジンオイルの種類と規格についてお話します。
普段皆さんが使っている車やバイクのエンジンを大別すると、4ストロークのガソリンエンジンとディーゼルエンジン、2ストロークエンジンの3つに分かれます。
現在発売されている車やバイクは、そのほぼ全てに4ストロークのエンジンを搭載していますので、まずは4ストロークのエンジンオイルについて解説します。
「4ストロークのガソリンとディーゼルでは使用するオイルが異なるの?」という素朴な疑問を持たれた方も多いと思いますが、一言で言うと、違います。
何が違うのか…それは性質です。
ディーゼルエンジンは燃料に軽油を使用しています。この軽油の成分には硫黄が含まれており、これが燃焼すると「硫黄酸化物」が発生します。この「酸」はエンジン内部が腐食する原因であり、これらを防止するためにディーゼル用のエンジンオイルには酸を中和させるアルカリ分が添加剤として多く入っています。
ということは…
ディーゼル用のオイルをガソリンエンジンに使用することは特に問題ないですが、ガソリン用のオイルをディーゼルエンジンに使用するのはNGということが分かりますね。
一般的に販売されているエンジンオイルはこの点をふまえて、ガソリン・ディーゼル兼用の「ユニバーサルタイプ」が多く流通しています。オイルのボトルをよく見てみると、何用のオイルか必ず記載されていますので、機会があればチェックしてみて下さい。
○エンジンオイルの規格
使用するエンジンオイルの品質がどうかを判断する基準の1つに規格があり、それを表記するための記号が存在します。
【ガソリン専用のエンジンオイル】
「SM」や「SL」等の表記がされています。
これは、頭文字が「S」で、それに続く「M」や「L」の記号が品質やグレードを表します。アルファベット順に「A」から順番に上がっていき、現在の最高は「N」。
つまり、最高品質は「SN」ということになり、「SA」~「SN」までのグレードで段階的に分けられるため、「SG」より「SL」の方が最新の規格をクリアしたということになります。
【ディーゼル専用のエンジンオイル】
「CD」や「CF-4」等の表記がされています。
こちらは、頭文字が「C」となり、Cに続く「D」や「F」の記号がガソリンと同様に「A」からアルファベット順で段階的に品質やグレードを表しています。
ディーゼル専用のエンジンオイルでは、「CA」~「CF-4」までのグレードに分けられ、現在の最高品質は「CF-4」となっています。
【ユニバーサルオイル】
これは先ほど説明したガソリン・ディーゼル兼用オイルです。ユニバーサルオイルの表記は「SN/CF-4」や「CF-4/SN」の様に、それぞれのオイルの表記を組み合わせた形になっています。この標記は、先に解説したオイルを基準に製造されたことを意味します。
例えば、「SN/CF-4」の場合、先に書かれている「SN」つまり、ガソリンエンジンオイルを基準に製造されたということです。逆に、「CF-4/SN」の場合は、ディーゼル用のオイルを基準に製造されたことが分かりますね。
現在一般的に販売されているエンジンオイルの大半がこれらの兼用になりますので、多くのオイルにこれらの表記がされていると思います。
ちなみに兼用だから全てオールクリアという訳ではなく、高出力を要するディーゼルエンジンの重機やトラックにはガソリンエンジンを基準に製造された「SN/CF-4」と表記されたオイルは適しません。この場合はディーゼル用オイルを基準に製造された「CF-4/SN」と表記されたものをオススメします。
これらの規格はアメリカ石油協会(American Petroleum Institute)がエンジンオイルの品質を定めたもので「API」規格といいます。この規格の適合を証明するために、オイルのボトルには「APIマーク」通称ドーナツマークが表記されています。
これと並行して、国際潤滑油標準化認定委員会(International Lubricant Standardization Approval Committee)には、API規格の「SH」以上のグレードを基に「省燃費性」を定めた「ILSAC」規格というものも存在します。こちらも規格適合を証明するために、「ILSACマーク」通称スターバーストマークが表記されています。
これらの規格は数年毎に見直され、アップグレードされ続けています。現在流通しているエンジンオイルも、大半がこれらの規格に準じて製造されているため、それぞれのロゴマークが必ずボトルのどこかに記載されています。
ここまでガソリンとディーゼルのエンジンオイルの違いと規格についてお話してきました。
次回はもう少し掘り下げて、エンジンオイルの品質と粘度についてお話していきます。