これまで、エンジンオイルの品質や種類についてお話してきましたが、今回はオイル交換について触れたいと思います。
「エンジンオイルの交換」という言葉は誰もが一度は耳にしたことがありますよね。
では…
Q.なぜエンジンオイルを交換する必要があるの?
A.ずばり…エンジンオイルが劣化するからです。
エンジンが作動している時に内部で行われる燃焼行程によって、「カーボン」や「スラッジ(すす)」といった不純物や酸化物、「ブローバイガス(これはまたの機会に詳しく…)」などがエンジンオイルに混入し、汚れて劣化します。劣化すると、本来の機能や性能が低下して、エンジンオイルの役目を果たせなくなってしまうんです。
じゃあ…
Q.役目が果たせなくなるとどうなるの?
A.簡単に言うと「エンジンが壊れる」可能性が大いにあります。
ならば…
Q.ほとんど走ってないから交換しなくても良いのでは?
という考えが浮かびますよね。でも…
A.それは大間違い。
エンジンの作動時間が短くても空気に触れることでも酸化して劣化していきます。
つまりエンジンオイルが劣化する主な原因は、「エンジンが作動する事で汚れてしまうこと」と「酸化」の2つ存在するということですね。
その他にも劣化の原因として熱による影響があります。
エンジンは内部で1,000℃以上の高温で爆発燃焼していて、機種によっては2,000℃以上になることも。
オイルは以前のお話で説明したように、潤滑・洗浄だけでなく冷却の役目も担っています。
つまり燃焼行程で発生した高熱のカロリーを、エンジンオイルが潤滑と洗浄をしながら吸収して冷却している影響で、走行中のエンジンオイルの温度(油温)は100℃を超えていることも当たり前。
この熱により劣化が進行するという訳です…
ちなみにエンジンオイルの適正温度は90℃前後と言われています。
もちろん自動車メーカーは適正な温度になるようにエンジンや車両を開発していますが、長時間の渋滞やスポーツ走行でエンジンオイルの温度(油温)が上昇し過ぎた場合は、酸化が進んだり、含有されている添加剤が消耗したりというダメージにより、劣化が一気に促進されてしまいます。
レースの世界では油温を適切にするために、オイルクーラーというオイルを冷却する装置や、オイルの温度を計測する油温計を取り付けて管理するのが常識となっています。
そのくらい油温がエンジンオイルの寿命や性能を左右する鍵となることが分かりますね。
ここで一つマメ知識!
では、「エンジンオイルの温度が低ければ良いのか?」という素朴な疑問が頭に浮かびますよね。
これは間違い!近所までの買い物やちょっとそこまでみたいなチョイ乗りで油温が低すぎる状況も、エンジンオイルが劣化する原因となります。熱くなりすぎても、低すぎてもダメ!
なぜかというと…
エンジンが燃焼行程を行う上で発生する、燃料を含んだ燃焼ガスや水蒸気の発生が関係しています。
油温が程よく上昇していれば、これらがオイルに混入しても、ある程度は蒸散させることができます。しかし、低く冷めた状態だと蒸散できず、オイルに混入したままで、その影響をダイレクトに受けてしまうことにより劣化が促進されるというわけです。
以前、オイルはエンジンの温度の影響で粘度が変化すると説明しました。
油温が低すぎると粘度が硬いままなので、どうしても燃費に影響を及ぼします。
つまり、自分の車に搭載されているエンジンや使い方によって適切なエンジンオイルをチョイスすることがとても重要だということです。
ここまでの内容をまとめると、
- 走行距離や時間に関係なく大気に触れる事による劣化
- エンジンの燃焼行程で発生する熱による劣化
- 低温で使用する事によるガスや水分混入による劣化
- 圧力を受ける事による剪断性能の低下
- 燃焼行程や金属の摩耗によって生じる金属粉や不純物の混入
これらの化学反応と物理的な要因によってエンジンオイルが劣化するということです。
エンジンオイルが劣化すると、当然ながら、エンジンオイルの役割である潤滑・洗浄・冷却・密封・防錆の効果も低下し、エンジンの性能低下だけでなく、最悪破損にまで至る事態にも発展します。
そうならないように、一般的な車やバイクに搭載されている4サイクルエンジンの場合は、オイル交換というメンテナンスが必須となるわけです。
今回のお話はここまでです。次回はオイル交換について説明していきます。