前回はエンジンオイルの性質についてお話してきました。今回はオイル交換についてです。
Q.エンジンオイルの交換時期の見極めや目安はどうするの?
A.エンジンオイルの劣化は見た目だけではとても判断が難しく、目視による汚れ具合はエンジンのコンディションや使用状況によっても異なります。そのため、一般的には交換の目安を「距離」や「使用期間」を重視して判断します。
昔からエンジンオイルの交換の目安として「3,000km~5,000km走行毎」、もしくは「半年か1年毎」というセオリーが存在し、皆さんが日頃お世話になっている整備工場やガソリンスタンドからも、この目安を基にオイル交換をすすめられていませんか?
ここで新たな疑問が発生…
Q.じゃあどんな車でも5,000kmまでは交換しなくて大丈夫?
Q.何で3,000km~5,000kmと幅があるの?
A.車によって搭載されているエンジンにいろいろな種類があるからです。
皆さんが乗っている一般的な車にはガソリンの自然吸気エンジン(NAエンジン)が搭載されていますが、中には過給機を装着したターボエンジンやロータリーエンジン、直噴エンジン、ディーゼルエンジン、オートバイのエンジンなどが搭載されたものも存在します。
この中でもディーゼルエンジンは燃料(軽油)に硫黄分が含まれているので、ガソリンエンジンに比べてエンジンオイルの劣化が早く、交換時期も早まります。
他のエンジンも高出力を目的として作られているものは、自然吸気のガソリンエンジンに比べると厳しい状況下でオイルを使用しているため劣化が早まり、それに伴って交換時期も早まります。
もちろんエンジンの種類だけでなく、乗り方も重要なポイントになります。
運転の状況がエンジンの回転数を常に高回転域で多用する場合(スポーツ走行)と、そうでない場合を比べると、エンジンオイルの劣化具合は明らかに異なります。
つまり「エンジンの種類」「エンジンオイルの種類」「運転状況」「使用環境」によって、エンジンオイルの劣化具合が異なるので、大局的な考えでこのような範囲を設けて、一般向けに分かり易くしているというわけなんです。
参照までに車の取扱説明書などには、それよりもはるかに長い距離が記載してあったりするのが実情ですが、エンジンオイルの交換の目安は「3,000km~5,000km」。そのくらい走行したらその都度交換し、走行距離がそこまで到達していなくても「半年か年に1度」は交換と覚えておいてください。
ではここからが本題です。
実際にエンジンオイルの汚れ具合をチェックしてみましょう。
1.エンジンオイルの量
まず、車のボンネットを開けて、写真の赤丸で囲んでいるレベルゲージを見つけたら引き抜いて下さい。
レベルゲージの位置は車両によって異なりますので、分からない方は取扱説明書を参照してくださいね。
引き抜いたレベルゲージに付着しているオイルを布で拭き取り、もう一度差し込んで先端部分をチェックして下さい。
そこにエンジンオイルの量を測る刻印や穴などの印が二ヶ所あるはずです。この範囲内にオイルが付着していれば、量は問題ありません。
2.エンジンオイルの色
写真1はオイル交換して間もない状態。写真では、一見何も付着してないように見えますが、赤矢印の部分にエンジンオイルが付着しています。これは交換後の走行距離が少ないというだけでなく、エンジンのコンディションも良いので、ほとんど汚れる事なく、ほぼ無色透明というわけです。
続いて、写真2はどうでしょう。
写真1とは異なり、青矢印の指しているレベルゲージの先端部分に真っ黒なエンジンオイルが付着しているのが分かりますよね。
この程度まで黒くなっていたら、そろそろ交換を考えてもいいかもしれません。
<写真1>
<写真2>
ここでワンポイントアドバイス!
オイルが汚れていなくても、オイルの量は必ずチェックして下さい。
オイルの量を的確に確認するためには、引き抜いたレベルゲージに付着したオイルを布で一度拭き取ってから、再度差し込んで抜いた時に付着したオイルの量で判断するのが重要なポイントです。
再度抜き取ったレベルゲージを目視で確認し、下側の刻印すれすれや、それを下回っている場合や、全く付着していない場合は、オイル漏れやなんらかのトラブルを抱えている可能性があります。最悪の場合、過走行やオイルの管理不足により、オイルの性能が劣化することで、オイル本来の重要な役割である潤滑機能が著しく低下し、エンジン内部を構成する重要な各パーツのクリアランス(隙間)が著しく広がるというダメージを受けてしまいます。その結果、気密性が損なわれ、本来オイルが流れるはずのない燃焼室内へ大量に流入し、内部で燃焼することでオイルを消費する「オイル上がり」や「オイル下がり」といった重度な現象が発生している疑いもあります。
その場合はオイル交換以前の問題!一度最寄りのオートパルや整備工場で診断してもらうことをおすすめします。
ちなみに、青信号で発信した車のマフラーから、半端なく異臭を放った大量の白煙がモフモフ出ている車をたまに街中で見かけますが、これらは「オイル上がり」や「オイル下がり」の末期症状なんです…
レベルゲージを引き抜いて目視でオイルの汚れ具合をチェックするのも一つの方法ですが、確実に交換時期を判断するには、距離や時間による目安も重要な判断材料であり、これら全てから総合的に判断するのが賢明でしょう。
「いつ頃」に「何km」でオイル交換をしたのかを確実に把握していれば、汚れ具合だけでなくオイルの劣化をトータルで判断でき、適切なタイミングでオイル交換を実施できます。
では、そのタイミングを把握しておく方法をご紹介。
いつ頃オイル交換をしたのかを記載したラベルを車のどこかに貼りつけておけば、一目瞭然!
このラベルにはオイル交換を実施した年月日と次回の交換距離を記載しています。
もし、オイルが汚れておらず、5,000kmも走行してない状態でも、前回の交換から半年もしくは1年以上経過していれば、交換時期だと判断してください。
現在JAえひめ中央のオートパルでは、オイル交換を実施した全車両にこのようなラベルを貼りつけて、整備士だけでなくユーザーにも適切な管理をしてもらえるように努めています。
オイルの役割・種類・交換などさまざま説明してきましたが、エンジンオイルについて理解を深めていただけましたか?
皆さんもご自身の車で使用しているエンジンオイルを気にかけて、適切に管理することで快適なカーライフをエンジョイしましょう。