車やバイクに乗っている皆さんは「エンジンオイルの交換」という言葉を耳にしたことがあると思います。
「オイル交換どうですか?」「エンジンオイルは定期的に交換した方がいいですよ」と言われても、「エンジンオイルって何?」「よく分からないけど、とりあえず交換しとこうか…」といった具合にカーライフを過ごしている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「エンジンオイル」について簡単に説明していきます。
エンジンオイルというのはその名の通り、車やバイク、はたまた農機具や産業機械に搭載されているエンジンに使用されている潤滑油です。「潤滑油って何?」と思われた方に…潤滑油とは、物体が擦れ合い、抵抗が増加し動きが重たくなった箇所に、油を垂らしてヌルヌルにすることで、抵抗を減少させスムーズに動くようにするもので、ドアがきしんだときに、「シュッ」と油を吹きかければ楽々開閉出来るようになるあの「シュッ」と吹きかける油こそが潤滑油です。
エンジンオイルの機能はまさにその油で、車やバイクの動力源であり、心臓部とも言える重要なエンジンが壊れないように、エンジン内部の各ポイントを循環させる役割をしています。人間で例えると血液のようなものでしょうか。
それでは実際に車やバイクで使用されている一般的な4サイクルのレシプロエンジンの潤滑メカニズムがどうなっているかを解説します。エンジン下部に取り付けられている「オイルパン」というオイルを溜める部分にオイルが規定量入っていて、そのオイルをエンジン内部に取り付けられている「オイルポンプ」という部品が汲み上げることで、エンジン各所にオイルが圧送(強制的に圧力をかけて送ること)され潤滑し、各部を潤滑したオイルが再びオイルパンに戻って来るという仕組みになっています。
潤滑はエンジンオイルが担っている仕事の一部分でしかなくて、下記のような3つの大きな役割があります。
1.潤滑
エンジン内部の金属同士が高回転で擦れ合う際に発生する摩擦力を軽減し、各部の運動を円滑にスムーズにさせる作用
※もし抵抗が増えれば、燃費の悪化といった症状を引き起こすだけでなく、エンジンが焼き付いて故障といった事態に発展することもあります。
2.冷却
燃料と空気を混ぜて発生したガスを爆発・燃焼させることで発生した熱と、各部が擦れ合うことで発生した熱を冷却する作用
※車種によってはオイルを冷却するための「オイルクーラー」が装備されている車両も多数存在します。発熱したエンジンから吸収した熱カロリーによってオイルが高温になっているということは、それだけ冷却作用に貢献しているということです。ちなみに各部を潤滑してオイルパンに戻ってきたエンジンオイルは、100℃を超えるほど高温になっています。
3.洗浄
内部で発生したカーボンやスラッジと呼ばれる汚れを洗浄する作用
内部で燃焼行程を繰り返していると、カーボンやスラッジと呼ばれる汚れ(すす)が発生してしまいます。また高速で金属同士の各部が擦れ合うことで、微量の金属粉も発生し、これらの不純物がエンジン内部にたまってしまうと、性能低下だけでなく、エンジンその物の寿命にも著しく影響を及ぼします。これらの不純物がたまらないよう、汚れを吸着・分解しています。
もっと掘下げれば…
エンジンは全てが金属で構成されており、近年は大半がアルミエンジンと表記されていますが、それは「シリンダーブロック」というエンジンのボディーにあたる部分だけで、現在でも高強度・高剛性・耐摩耗性を求められる箇所には従来同様にスチール(鉄)が使用されています。
内部が燃焼により高温に晒されることで、冬場などは外気との温度差により水蒸気が発生しやすい環境になり、スチールを使用している箇所には、どうしても錆の発生が懸念されます。(スチールは組成上、金属の中でも特に錆が発生しやすい)エンジンオイルが各部を潤滑する過程で、油膜を形成し、保護膜として酸化を防いで錆の発生を抑止してくれる防錆の作用。他にも、密閉の作用がありますが、この説明をしていると「ブローバイガス発生論」「クリアランス理論」等かなりマニアックで奥深い話になってしまうので割愛します。もっと詳しくオイルの作用について知りたい方は、最寄りのオートパルへ問い合わせ下さい。
何だか難しい話になってしまいましたが、エンジンオイルの理論では、ほんの1%程度のお話しなんです。
今回はエンジンオイルの作用について説明しました。次回はこの内容をふまえて、エンジンオイルの規格や種類についてもう少し掘り下げていきたいと思います。