前回までの解説では、環境と人に優しく、一見高性能に思える4サイクルエンジンですが、メリットばかりというわけにはいきません。ではデメリットとは何でしょうか?
それは、どうしても2サイクルエンジンと比較して出力に劣るという点が真っ先に出てきますが、それ以外の点は大半が構造面に表れています。
特にシリンダーヘッドの構造が複雑になるために、どうしてもコストを要すること、それと同時に緻密な構造であるがゆえに、ふとしたことでトラブルが発生してしまう要因を含んでいることが挙げられます。
またまた余談になりますが、モータースポーツ等のレース(特に長丁場を走り抜く耐久レース)においては、あちこち手を加えて壊れにくいマシンに仕上げることは必須条件となりますが、エンジンを壊さないように労わりながら速く走るというマシンコントロールも要求されます。
皆さんの車にもあるタコメーター(エンジンの回転計)に記してあるレッドゾーン。
【引用】http://blog.livedoor.jp/tommykaira/archives/50665966.html
これは有効回転領域の限界を記しており、市販車ではこのレッドゾーンにエンジンの回転数がある程度達すると、強制的にそれ以上回転を上がらなくする「レブリミッター」という安全装置が備わっています。
しかし競技用の車両ではそれを備えていない、もしくはレッドゾーンであるレブリミットを大幅に引き上げるセッティングを施しているものが珍しくはありません。
設定したレッドゾーンを無視してその領域を多用する乗り方や、突発的にレッドゾーンを上回る回転数まで何度もエンジンを回してしまうことを「オーバーレブ」と総称し、オーバーレブを繰り返すことで、動弁系(バルブやカムシャフトまわり)に負担が蓄積し破損したり、ピストンの動きとバルブの開閉タイミングが突発的に狂いピストンがバルブを突き上げてバルブが破損(バルブクラッシュ)したりという現象が走行中に発生し、結果的にエンジンブローに至ってリタイヤを余儀なくされてしまう、なんて事態は決して珍しい話ではありません。
【引用】http://minkara.carview.co.jp/userid/249939/blog/28746693/
精密な構造であるがゆえに、ふとしたことでトラブルを誘発してしまうということを理解していただけましたか?
「普段街中を走っていればそんなことは無縁でしょ?」と思う方も多いと思いますが、これはあくまでも使い方による結果の違いであり、4サイクルエンジンはこういった要素を含んでいる構造であるという認識をしていただけたらと思います。
参考までに動弁系に限らず、ピストンとクランクシャフトを連結しているコンロッドが折れたり曲がったりなんてもの、レースの世界ではよくあるトラブルなのです。
【引用】http://cadcars.xii.jp/archives/5163
もう1つのデメリットとしては、シリンダーヘッドにバルブやカムシャフトを組み込む構造のために、どうしてもシリンダーヘッドが大きくなってしまうことから、エンジン自体が大型化してしまうということです。
シリンダーヘッドが大きくなり、さまざまな部品が組み込まれるに伴って、重量増や重心位置が高くなるという点も挙げられます。
また構造が精密で複雑なため、どうしても整備の面において手間を要することもデメリットの1つ。
車の走行距離が10万kmに近づいた際に発生する「タイミングベルトの交換」が挙げられます。交換時にはそこそこ高額な費用がかかりますが、これはベルトにより動弁系を作動させている4サイクルエンジンにとっては必須となる交換作業で、4サイクルエンジンの宿命みたいなものです。
しかし近年発売されている車のエンジンは、ベルトの代わりにチェーンを採用していますので、この件に関してはもはや過去の遺物みたいなもんですかね…
【引用】http://syaken-parts.com/index.php?%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E9%A1%9E
前回と今回で、4サイクルエンジンのメリット・デメリットを解説しました。
どんなものでも、良い点と悪い点はあるものですね。
次回からは2サイクルエンジンについても同様に、メリット・デメリットをみていきましょう。