4サイクルエンジンよりもパワーに勝って、軽量コンパクトな2サイクルエンジン。
そんな2サイクルエンジンにもやはりデメリットはあります。
それは「燃費の悪さ」と「排気ガスの問題」です。
4サイクルエンジンのように、バルブが存在しシリンダーの気密が保たれていないため、シリンダー内部に充填した混合気をピストンで圧縮する行程において、どうしても吸気側への吹き返しや、排気側への吹き抜けといった現象が発生してしまいます。
これは2サイクルエンジンでは免れない現象で、4サイクルエンジンと同じように必要最小限の燃料で効率化にこだわると、爆発に必要な混合気が不足してエンジンが作動しないという症状が懸念されます。
そのため爆発燃焼に最適と想定されるシリンダー内部に噴射する必要な燃料の量を、想定される量よりも多少余分に噴射する必要があります。それに伴い、濃い目の燃料を噴射(ガソリンの濃度が濃い混合気)しシリンダー内部に充填させますが、全てが爆発して有効に活用されるわけではなく、多少なりとも排気側へ吹き抜けて無駄にしてしまいます。
しかもクランクシャフトが回転する毎に爆発燃焼(その都度燃料を消費)するわけですから、作動時間が同じ場合、単純に計算しても4サイクルエンジンの2倍の燃料を費やしていることになります。どうしても燃費の悪化は避けられません。
また、4サイクルエンジンほどの気密が保たれていないシリンダーである上に、エンジンオイルを燃料と一緒に混ぜた状態の混合気をシリンダー内部に噴射して爆発燃焼を行うため、混合気を完全に燃焼させることが物理的に困難な環境です。
昔よく見かけた、原付のマフラーから大量の白煙をモクモク吹きながらノロノロ走っているおばちゃん。
あの白煙こそがオイルが完全燃焼できていない状態で、混合気自体が効率よく完全燃焼されていない証にもなります。
【引用】https://www.chudai-seikyo.or.jp/acty/new/new04.html
4サイクルエンジンのようにオイルが各所を循環する構造ではないため、潤滑面はともかく、冷却や洗浄の効果は十分に期待できず、どうしてもエンジン内部に不純物が堆積しやすい状況にもなってしまいます。
徐々に堆積された不純物が、効率の良い爆発燃焼の弊害や、各所のスムーズな動きの妨げになる場合もありますので、ある程度使い込んだ2サイクルエンジンはますます排気ガスに問題が発生する要素を含んでしまいます。
排出される排気ガスに未燃焼ガスや有害物質が含まれるという問題の要素を大いに抱えてしまうわけですね。
これらの理由から燃費や環境面からの視点では、エコやクリーン性で4サイクルエンジンにかなり劣ってしまいます。
もっと基本的なことになると、4サイクルエンジンのようにエンジン内部に常にオイルが溜まって循環している状態ではないので、別途に設けたオイルタンクからエンジン作動時に常時オイルを消費している状態となります。
オイルの量をチェックして、減っていたら補充をしていないとオイル切れを起こし、最悪は焼き付きというエンジン破損のトラブルにも発展しかねません。
これに関してはオイルタンク内にセンサーが装備されており、ある一定の量までオイルが減少するとチェックランプがメーター内に点灯する仕組みになっていますので、普段はそこまで気に掛ける必要はないとは思いますが、もし何らかの原因でセンサーやチェックランプに不具合が生じたまま気付かずに使用し続ければ、知らない間にオイル切れを起こしてしまう可能性もあるので、意識しておきましょう。
また、オイルを混合気と一緒にエンジン内部に噴射していますから、高回転を多用した乗り方をするといった過酷な使用状況下では、オイルを吐出しているオイルポンプからのオイル吐出量やタイミングが追い付かず、結果的にエンジンへ「焼き付き」「抱き付き」というダメージを与えてしまうという懸念もあります。
【引用】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%BC%E3%81%8D%E3%81%A4%E3%81%8D
市販されている2サイクルエンジンを搭載したバイクをレースなどの競技用車両に改造する場合は、「焼き付き」「抱き付き」といった懸念を解消するため、オイルポンプを除去して、燃料にエンジンオイルを混ぜたものを使用します。
もちろんレース専用車両として開発された車両のエンジンは、燃料にエンジンオイルを混ぜて使用することを前提としてあるため、最初からオイルポンプやオイルタンクはエンジンや車体には装備されていません。
ちなみに燃料にエンジンオイルを混ぜて使用するこの燃料を「混合ガソリン」といい、略して「混ガス」と呼び、この混ガスを使用する車両のことを「混ガス仕様」と称します。
今回は2サイクルエンジンのデメリットについてお話ししました。
次回ももう少し、2サイクルエンジンの構造上の懸念点を解説していきます。